夜、同居人のRチャンが、私の部屋をノックして言った。
「ちょっといい?」「は〜…実は、生理がこないのよ」「どしたの?」明日の授業の準備をしていた私は、ノートから顔を上げて応えた。
「あのさあ、言いにくいんだけどさあ」Rチャンは、壁に寄りかかって立ち、腕ぐみ。
「うん、いいよ」子供ができる身体の証明?「まだハッキリしないんでしょ」「まあね。
なんか、現実感、ないよね」「ほんと」「ウソつき」「あらら−、ビンゴ!私もだよ!」「なにが、ビンゴよ、冗談じゃないんだから」「でも、私、まだバージンだしい」私はMの「ライク・ア・バージン」の鼻歌ヴァージョンを歌った。
「いや、まあ、エヘヘヘ」「まったく、ノンキなんだから。
どうしようと思ってんの?」「ん、まだ2週間遅れてるだけだから、もうちょっと様子見かなって」「そつか−。
私は3週間」「おめでとう!Rチャン、ママになるのねえ」「うんもうっ・真剣に悩んでるのにっ!」Rチャンの彼は、日本語ぺラペラのスペイン人のM。
すぐに、Mと私の彼、そして私たちの4人で、家族会議ならぬ、恋人会議を開いた。
「まいったねえ」誰かに相談しようにも、適切な人が周りにいない。
人生の先輩とはいえ、両親に打ち明けたら卒倒しそうだ。
大学の先生もマズイだろう。
年上のMが決断した。
「とにかく次の日曜日、病院に行こう」初めてくぐる婦人科の門。
禁断のカオリだ。
Rチャンがささやいた。
「消毒薬のニオイがするね」待合い室に入ると、お腹の大きな女性や子連れのママが、いっせいに私たちにキビシイ視線を投げつけてきた。
私たちが結婚前の不良娘に見えるのだろう。
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